光害について

光害(ひかりがい)とは、過剰または不適切な人工の光による公害

あなたの住んでいる地域から、天の川を見ることができますか?

現在、過剰な人工の光によって、世界人口の3分の1以上、日本では人口の7割が、天の川を見ることができないと言われています。(イタリア光害科学技術研究所)

夜空が明るくなることにより、天体観測に障害を及ぼすほか、生態系への悪影響やエネルギー浪費など、様々な影響が指摘されており、光害は地球上で急速に広がっている新たな環境問題です。特に、夜間も経済活動が活発で人口が密集した都市部で深刻な問題となっています。

光害による悪影響

エネルギー浪費

アメリカでは、無駄な照明により年間約33億ドルの電気代が浪費され、2,100万tのCO₂を排出しているという試算があります。このCO₂を相殺するには毎年8億7,500万本の木を植える必要があります。

⽣態系への悪影響

多くの野生生物が人工光によって生態を乱され、特に渡り鳥、ウミガメ、昆虫などは多数犠牲になっています。さらに昆虫に受粉を依存しているすべての植物にも悪影響を及ぼします。

農作物への悪影響

夜間照明が農作物の発育に影響し、等級低下、収穫量の減少などの被害が出ることがあります。特にイネへの被害は大きく、照明によって出穂が10日以上遅延し、半分近くが青米になってしまう事例もあります。

人体への健康被害

夜間に光を浴び続けると、私たちの健康維持に必要なメラトニンの生成を抑制し、様々な健康被害(睡眠障害、鬱病、肥満、糖尿病、心疾患、癌など)に結びつくとの研究結果が数多くあります。

天体観測への悪影響

夜空に漏れた光は、星の微かな輝きをかき消し、天体観測を妨害します。また、私たちに好奇心やインスピレーションを与えてくれる美しい星空や天の川を楽しむ機会が奪われます。

光害の種類

Sky Glow(スカイグロー/上空への光の乱反射)

スカイグローは、照明器具から直接上空へ放出された光が大気中で散乱し、夜空が明るくなる現象です。これにより、星や天体の観察が難しくなり、夜空の自然の美しさが損なわれます。スカイグローはしばしば数百キロメートル離れた場所からでも検出されることがあります。

Glare(グレア/まぶしさ)

グレアは、水平方向に過剰な光が目に入り、視覚を妨げる現象です。車のヘッドライトが目に入るような状況が想像しやすいですが、瞳孔が収縮することによって影の中に隠れている物体や人を見分ける能力が低下します。グレアは視界を妨げ、結果として安全性やセキュリティを損なう原因となります。

Light Trespass(ライト・トレスパス/侵入光)

ライト・トレスパスは、照明が意図したエリアを超えて隣接する住宅や建物を照らす現象です。この光害は、不動産価値を損ない、生活の質を低下させるだけでなく、睡眠や健康の維持にも悪影響を及ぼします。また、プライバシーや快適な生活環境を損なう要因にもなります。

Light Clutter(ライト・クラッター/乱雑光)

ライト・クラッターは、光源が過剰かつ至るところに集まり、視覚の混乱や注意の分散を引き起こす現象です。特に道路では、街灯や看板の光が集まりすぎることで運転者の視覚が妨げられ、事故の原因となることがあります。これは、不適切な照明設計の結果として発生します。

夜空を守る屋外照明

光害を抑え、自然の夜空を守るためには、すべての照明の目的を明確にし、必要な場所だけに、必要な量の明るさで、必要な時間にだけに、照明を使用するようにしましょう。
また、光の色(色温度)も重要です。白い光(5000K)はオレンジがかった暖かみのある色(3000K)よりも3倍散乱されやすく、夜空にとても有害です。色温度の低い3000K以下の暖かみのある電球色を使いましょう。


質の良い屋外照明の適切な使用について、ダークスカイ・インターナショナルと北米照明学会が共同で発表した Five Principles for Responsible Outdoor Lighting(責任ある屋外照明の5原則)の日本語訳版を自由にダウンロードして配布することができます。(※改変することはできません)